各科目ごとにおける理論暗記の重要性は左のタブからご覧ください
こちらでは全般的な話を少し説明したいと思います。
国税庁のHPには税理士試験の目的というものが明示されています。
それは、
「税理士試験は、税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的として行われます。」
というものです。(太字は追加しています。)
求められているのは2点
①学識
②応用能力
です。
ところで、「税理士」に、一般の方が期待するものはどんなことでしょうか?
単に、税金の申告を頼めばしてくれることでしょうか?
そうではありません。
「税金については、すべての知識を有して、なんでも質問に答えてくれる。しかも、最低限、税金については何でも知っていて、さらに、+αの幅広い知識を有している。」
そんな状態を期待するものです。
国税庁のHPで明示されている指針は、一般的な税理士像と同じです。
①税金については何でも知っている⇒学識
②何でも質問に答えてくれる⇒応用能力
というわけです。
とはいえ、税金や税法については、一般の方々も全く無知ではありません。税制改正があるたびに、さまざまな新聞・雑誌等で取り上げられますし、一般向けに税金や税制を解説した本もたくさん出版されています。
非常によく解説された本もあるので、読んだだけで大枠が理解できることもあります。
おおまかな税制は、一般の人でもざっくりと理解できるものです。
「消費税は何%なのか。」
「今度の減税策はなんなのか。」
「何に対して増税なのか。」
聞いても全く理解できないようでは、政策として国民にアピールすることができません。
それで、税理士ではなくても、少し詳しい方は税金についてかなり詳しく説明できたりします。
当然ですが、税理士にはそれ以上の税金についての学識が要求されており、期待されています。
具体的にいうならば、各税法における「用語の定義」、各税法において定められている「制度の適用要件」といったものが、完璧に説明できなければなりません。
「○○会社に、□□という費用を支払うのだけれども、法人税法上の取り扱いはどうなるのか?」
という質問に対し、法人税法上の各費用の定義が完璧に頭に入っている税理士は、
「法人税法上、●●費は、『△△・・・』と定義されているので、今回の□□は、●●費になり、▲▲のように取り扱われます。」
と答えられます。
やはり、税金の専門家ですから、法律家として一字一句条文通り定義ぐらいは言えることが期待されます。
各制度の適用要件も同様です。
「自分がこの減税制度を受けられるか?」
という質問に、単に適用の可否だけを回答するのではなく、適用要件を一字一句条文通り言えた上で、質問した人自身にも適用の可否が判断できるように説明する専門家が信頼できる専門家です。
法律家として、その程度の学識は身に着けていてもらわないと困ります。
以上の事から明確なように、ある程度条文を一字一句言えることは、国からも一般の人からも期待されています。
それで、税理士試験において理論暗記として大量の条文の暗記が求められることは当然です。受験経験者であれば、そのことは実体験を通して感じているはずです。
「税理士試験は理論暗記が大変だ」ということを。
近年、各科目の応用問題が多くなってきました。
とはいえ、上記のように信頼される専門家として、最低限の学識が不要になったわけではありません。
今後も、不要になることはないでしょう。
※もちろん時代は移り変わってネットによって、いつでもどこでも条文が見られるようになりました。とはいえ、いつでも質問されて条文の定義を確認できる余裕があるわけではありません。
それで、基本的な条文で定義された「用語の意義」や「適用要件」などについては、試験において条文通り記述できるかどうかを試すことも、なんら不合理なことではないのです。
最低限の事柄として、それらを暗記し、その上で暗記した知識を応用する能力が求められるのです。
なにより、「税金の専門家」にならなくても、本を読めば税制を理解して、有利な税制を選択することはできたりします。
求められるのは、その程度の応用力ではありません。
条文が完璧に頭に入った状態での、その上での応用能力なのです。
その頭にある条文の知識を、質問した人にわかりやすく説明して納得してもらえるように説明できる能力が求められているのです。
難しい条文を難しいまま説明する人は、自分の頭で理解できていないことは確かです。とはいえ、覚えていないものは説明できません。
そのための理論暗記なのです。